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キニナル記

その時気になったものを完全主観で綴ります。

阪神タイガース・矢野監督の采配に賛否が真っ二つなのはどうして?

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プロ野球2021年のシーズンに16年ぶりのリーグ優勝をわずか5厘差の2位で逃した阪神タイガース

そんな阪神タイガースを率いている監督が矢野燿大(やの あきひろ)監督です。

現役時代は主に阪神タイガースで活躍し、2003年、2005年のリーグ優勝に貢献した優勝捕手で、2003年には打率.328 14本塁打 79打点をあげるなどバッティングでも活躍しました。

面倒見の良い性格から特に投手から慕われ、現役引退後に小久保JAPANのバッテリーコーチに就任。2014年の日米野球や2015年のプレミア12に参加しています。

その後、2016年2017年は阪神タイガースの一軍コーチに就任。
2018年に掛布雅之さんが二軍監督を退いたことから二軍監督に就任しました。

そんな矢野監督の手腕や采配についてネットで批判や疑問など様々な声が集まっていたのはなぜなのでしょうか。主な矢野監督時代の采配や出来事について紹介します。

 


▼二軍監督時代の矢野監督がもたらした意識改革

2018年のウエスタンの全115試合でリーグ最多163盗塁を記録。
決して走れるチームではなかった阪神タイガースに意識改革をもたらしたのが矢野監督でした。

盗塁王を獲得した近本選手・中野選手だけでなく植田選手・熊谷選手・島田選手・江越選手ら阪神陸上部と呼ばれる面々も育成。

2軍監督時代から掲げる「超積極」スタイルが数字となって表れているのが、盗塁数だ。100(2019年)、80(2020年)、114(2021年)と3年連続で盗塁数はリーグトップ。

阪神、V逸・CS惨敗でも“17年ぶり優勝”へ築かれた土台――矢野体制の確かな「3つの功績」(REAL SPORTS) - Yahoo!ニュース

失敗を咎めずチャレンジさせる矢野監督。
高卒2年目に向けた有望株・高寺望夢選手がファームで20盗塁を目標に掲げたところ…

すかさず矢野監督から「失敗から学べるから、盗塁20個することも大事だけど、40個チャレンジしてこい」と助言され、うなずいた。

阪神 高寺は現状維持 矢野監督の“盗塁企図40”指令に決意新た― スポニチ Sponichi Annex 野球


「ファームの試合を見に行くと、選手に対する言葉かけが怒るのではなく、凄くポジティブなんです。盗塁に関しても『失敗してもいい、どんどん行こう』と練習から言っています。選手も自信になるし、信頼感があるのではないでしょうか。指導者が走りの重要性を理解してくれた上で、積極的に盗塁という作戦を取り入れていました。足が速くなっているという実感から自信がつき、そこで後押ししてくれる監督という存在がいる、その両軸が整った結果だと思います」

阪神2軍で起きていた「走り革命」 若虎はいかに「163盗塁」の新記録を生んだのか | THE ANSWER



 


▼一軍監督として独自の采配で度々批判を受けていた

2016年に金本監督が就任して以来若手育成方針を示していた阪神タイガース

発展途上のチームで不動のレギュラーが不在の中、ファンの満場一致とはいかない選手の起用や采配ミスがネットで批判されることが多かった。
坂本誠志郎捕手、木浪聖也内野手、糸原健斗内野手への”贔屓起用”が検索のサジェストで出てくるほどでした。

そんな中で矢野監督は2020年の開幕カードの巨人戦でベンチ入りしていた梅野隆太郎捕手・坂本誠志郎捕手・原口文仁捕手を各試合でスタメンで出場させた。正捕手として不動の地位を築いたと見られていた梅野捕手を据えず日替わり捕手をしてスタートダッシュに失敗しネット批判された時の采配をこう振り返っています。

巨人にはずっと負け越してるんで。何か新しいことをしていいんじゃないかと。変わらない勇気も必要ですけど変える勇気も必要と思っています。梅野のせいにしているわけではないですよ。オープン戦で原口、坂本がそれぞれ組んだ投手との結果がずっとよくて。それぞれ持ち味が違うし。

矢野監督、捕手固定は昔の考え/新春インタビュー2 - プロ野球 : 日刊スポーツ


選手を盛り上げるためにナイスプレーに対して行った”矢野ガッツ”に批判があがったことも。

“矢野ガッツ”にも当初、「プロとして……」と強い抵抗感を示す人たちも少なからずいた。点差が開いても、ヒット1本で喜ぶ姿に眉をひそめる評論家のコメントも目にしたし、タイガースの選手も他球団の選手から「あのガッツポーズはどうなん?」と苦笑いされたこともあったという。

「あのガッツポーズはどうなん?」と言われても……阪神・矢野監督が“矢野ガッツ”に込めた思い | 文春オンライン


未来の姿を先に喜び祝うことで現実を引き寄せるという考え方の「予祝」を導入し、2021年のシーズン前に胴上げを受けた矢野監督に厳しい声が寄せられていました。

矢野監督の胴上げを受け、ネット上には「開幕前に監督が胴上げされるなんて初めて聞いた」、「口だけで優勝、日本一って言うよりはチームの士気が上がったりするもんなんだろうか」と驚きの声が寄せられた。

阪神・矢野監督の事前胴上げに「縁起でもない」ファンから悲鳴 24年前の“予祝”は最悪の結末に (2022年2月24日) - エキサイトニュース


2021年の7月6日のヤクルト戦で二塁ランナーの近本選手がリードの際に手を何度も動かしたことから”サイン盗み”疑惑がかかり、阪神ベンチが猛反発した際に騒動に発展したことに度々潔白を訴えたこともありました。

7月以降、阪神の主力打者陣の成績が急降下したこともありネットを中心に、阪神の「サイン盗み行為」がさも事実であるような言説が氾濫。昨年末には球界OBがラジオ番組で「サンズはセカンドランナーでコース教えてくればっかり言うらしい」と発言(後に謝罪)し、大きな波紋を呼んだ。

阪神・矢野監督が「サイン盗み疑惑」を蒸し返したワケ | 東スポのプロ野球に関するニュースを掲載


球団OBの江本孟紀さんは矢野監督のエラーに対する姿勢や”兄貴分”のような接し方にこんな意見を持っていました。

たとえば試合に出ている選手がエラーして戻ってきたとき、タイガースのベンチ内では「まあまあしゃーないわな」「次、しっかり守っていこう」という雰囲気が見て取れる。はたしてこれが闘う集団として機能しているのかどうか、と言われれば疑問を抱かざるを得ない。

兄と弟で野球をやっていると、出来の悪い弟を見るにつけ、「しょうがないヤツだな」と思いつつも、なかなか二軍に落とせずにいる。本来であれば、一軍で通用しないことがわかれば、二軍に落とすのがプロの世界では常識であるが、それが平然とできないというのは、勝負の世界に不必要な「情」が入っていることが考えられる。

「ベンチがアホなのが阪神の伝統」「矢野“兄貴”監督が変わらねば優勝はムリ」エモやんが古巣タイガースをぶった切り「ノムさんは矢野を“参謀向き”と見ていた…」 | 文春オンライン


ユーチューバーとしても活躍中の元プロ野球選手・高木豊さんは優勝を逃した2021年の采配についてこんな分析をしていました。

「今季の阪神の強みはなんだったか。特に前半戦で、打てない時にも勝てた試合で力になったのは"足"です。代走の起用、盗塁の成功率も高かったですよね。でも、後半はほとんど足を使えなかった。『使わなかった』と言ったほうがいいかもしれません。『自分たちは挑戦者』と言いながらも、批判を恐れた采配をしていたように思います。

阪神と巨人の急失速はなぜだったのか。高木豊が両監督の采配、CSに向けたキーマンを語った|プロ野球|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva


2022年のキャンプイン前日に矢野監督がまさかの今年限りでの退任発表…
これには球団OBの岡田彰布さんや田尾安志さんは懐疑的な見方をしていました。

「ビックリどころではなかった。(今季)最後まで優勝争いをすればチームの士気も上がるかもしれないが、途中でもしBクラスまで(低迷し)バーっと行くと、チームがおかしくなってしまうのではないか」と危惧。ホスト役の田尾氏が「チームが空中分解してしまう恐れがある」と同意すると「こんなん聞いたことがない。シーズン前、キャンプ前に…。(選手、コーチ陣は)愛着わくのかなあ」と率直な心境を語った。

OB岡田彰布氏が阪神・矢野監督〝退任〟に私見「チームがおかしくなってしまうのではないか」(東スポWeb) - Yahoo!ニュース


 


▼「伝統を作りたい」矢野監督が語った想い

負けが続いた時も「終わったことは変えられない」と切り替える重要性を度々口にしている矢野監督。
メンタル面で前向きにさせるためにこんな考えを持っています。

「俺はもう楽しむって決めてるから。俺が一番楽しまんと、選手は楽しまれへん。うれしい時は思い切り喜ぶし、悔しい時は悔しくなるし。俺はそういうタイプのやり方。じっとして微動だにしない監督さんもいれば、いろんなタイプがいていいと思うし別に俺は俺のやり方でチームを前に向かせていきたい。どうせしんどい、勝っても負けても。それやったら、楽しもうっていうのが俺のガッツポーズにつながっているというのを、ファンの方が喜んでくれるのであれば、うれしい」

「あのガッツポーズはどうなん?」と言われても……阪神・矢野監督が“矢野ガッツ”に込めた思い | 文春オンライン


凡打でも全力疾走
負けた時でも試合後にスタンドに向けて挨拶をする
そんな”教え”実践する大山悠輔選手はこの言葉を度々発しています。

進化を導いてくれたのは他でもない矢野監督だ。108試合で4番を務めた昨季。ミーティングでの「比べるのは昨日の自分。他球団や他の選手じゃない」との言葉が胸に刺さった。

阪神・大山 20、21号連発で巨人・岡本に並んだ 「比べるのは昨日の自分」 矢野監督の教え胸に進化― スポニチ Sponichi Annex 野球

最後に矢野イズムについてこんなコメントを紹介します。

俺は伝統をつくりたいのよ。勝つことはもちろんなんだけど、『タイガース、いいチームだよな』とか『俺らの自慢だよな』とか。

1軍で試合に出てお金をたくさん稼いでユニホームを脱いでいく選手ばかりじゃないから。ここでやったことが社会に出ても頑張れる基礎というか。『あの時一塁まで全力で走ったな』とか『諦めない気持ちをつくったな』というのが、営業に行っても生きたりとか。そこから伝統ができて阪神ファンのみなさんにも『俺のチームいいよな』と思ってもらいたい。

【阪神・矢野監督新春インタビュー3】「俺は伝統をつくりたいのよ」 チームの完成度証明のためにも優勝を― スポニチ Sponichi Annex 野球


そして退任発表について語ったコメントがこちら

俺も選手たちに『後悔のない野球人生を歩んでもらいたい』とか、『きのうの自分を超える日々を過ごしてほしい』とか言っている中で。俺自身が退路を決める中で、監督としてきょうのあいさつも『最後だな』と気持ちを持ってあいさつをさせてもらったし。あしたの2月1日の一日というのも、もう返ってこない一日なので。その一日も退路を決める、『来年はもう監督という立場でここに来ていることはないんだな』という気持ちを持って、自分も挑戦していきたい。それがチームのためにも選手のためにも、申し訳ないけど俺のためにもなるのかなという決断で決めたこと。そういうふうに伝えさせてもらいました」

阪神・矢野監督 選手の見本に「後悔のない野球人生を」【一問一答】(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース

選手に伝えてきた生き方を最後に自身で示した行動だったようです。

長年バッテリーを組んできた藤川球児さんはYouTubeで「”もう1年やります”っていう宣言」だと解釈していました。
youtu.be
※該当の話は11:20からです。



人気球団だけに就任中、様々な物議を醸して話題を集めてきた矢野燿大監督のエピソードでした。

矢野監督のポジティブシンキングに影響を与えた
ひすいこたろうさんとの共著も発売されています。